インタビュー

CSR実践セミナー講師に聞く!

「企業の社会的責任とは?」

経済人コー円卓会議日本委員会 専務理事 石田寛

 

企業の社会的責任に関する幅広い活動を展開している石田寛。
第一線で活躍する銀行マンからソーシャル・イノベーターに転身。
今回のインタビューでは、CSRにかける石田の考えや思い、

またその人となりに迫ります。

 

Q1: 石田さんは銀行員として金融の第一線で活躍されていたと伺いました。
なぜ、一見華やかで安定しているようにみえる職を手放してまでCRTに転職されたのですか。

 

-この団体に入ったのが2000年の後半で、その前に日本興業銀行で10年ほど仕事をしていましたが、組織の中での縦割りの社会、会社というものは縦割りの組織になっていますので、そこでの動きと社会で求められている動きとの間のギャップが広がりつつあるように感じました。コミュニケーションギャップや風通しの悪さというものを経験した中で、もう少し違う体制作りもあるのかな、と。
 それとともに、企業の中で様々な不祥事が起きていたことも気になりました。これは何か根本的な大きな問題、今の日本の社会やビジネスの構造自体に大きな問題があるのではないかということを当時強く感じました。そして、CSRという概念-まあ2000年の当時にはCSRというよりも、どちらかというと企業倫理とかコンプライアンスという言葉が流行っていましたけれども-を通じて、この大きな問題の解決に対して何か自分の役割があるんじゃないかと思ったわけです。そういう思いから2000年の8月に銀行を退職して、決意新たにCRTで活動しているというところですね。

 

 

Q2:CSRはなぜ重要なのでしょうか?

 

-CSRについては様々な議論がされていると思うのですが、企業にとって利益を出すことはすごく大切です。ただ、それとともに社会全体のニーズとか課題を見据え、配慮しながらどのようにビジネスを展開していくのかということが問題となっているわけです。そして、これを実現していくことで持続的な成長というものにつながるという見方が世界中で広がってきています。そういった意味で、今CSRが非常に重要になってきているのかなと思いますね。

 


Q3:CSRが存在しなかった場合、どのようなことが起こると考えられますか。

 

-CSR というものが無くてもそれなりに人間は生活できるでしょうし、企業も様々な形でビジネスを展開することもできると思うんですね。ただ、より具体的に、どのように様々なステークホルダー、様々な人々のニーズを聞きながらビジネスを展開して長いスパンで持続的な成長を実現するかを考えていく上で、 CSRという考え方は非常に有効だと思います。その一方で、もちろん単発的・短視眼的に1年や3ヶ月でどれくらい利益をあげるかということも時として大切になることもあるでしょうが。

 もしCSRを取り入れないで短期的な利益追求だけでいいという会社があれば、私は出来るならそれで全然構わないと思うのですが、多くの企業はそれで失敗しています。エンロンやライブドアの話でもそうですが、短期的に利益を上げることに一生懸命になると、様々なひずみが企業の中で生じてしまう。そこにおける風通しのよさなどを考えていくと、なかなか難しいのではないかと思います。ですから、CSRが無くでもビジネスというのは成立していたわけですから、それはそれでいいのでしょうけれども、実際にそれが企業として持続的に成長できるかというと、そこはまだクエスチョンマークが残るのではないかと思います。

 

 

Q4: CSRは世界を変えていると思いますか?

 

-これまでの活動を通じて、企業は「企業の社会的責任」ということで様々な形でアクションを起こし始めています。その結果として今何が起き始めているかというと、若い世代の中でもCSRが非常に注目を浴びてきているということが挙げられます。大学など様々な場所で講演をする機会もあり、実際にいくつかの大学では授業を行っていますが、若い方々の反応は非常に早くて敏感です。具体的には、就職先としてCSRに取り組んでいる会社に行きたいという声を彼らから上がるようになりました。私が学生の頃は給料が一番いいところはどこだろうということで選んでいた節が多々あったのですが、今の若い世代はどちらかというとそうではなくて、価値観が大きく変わってきていると感じます。
 もう少しグローバルに見ていきますと、例えばポーランドやロシアにおいても、社会主義体制が崩壊してこれからどういう国作りをしていくのかといったときに、CSRという概念も当然入れなければならないとの声が聞こえてきています。このことは、企業だけでなく国家や政府も CSR-私はこの場合"Country Social Responsibility"と言っています-が注目されていることからもいえると思います。そういった点においても、CSRは非常に役に立っているのかなと思いますね。

 

 

Q5: 近い将来、CSRにより社会的変化がおきると思いますか。

 

-徐々には起きてくるのではないでしょうか。現在はどちらかと言うと企業が中心に取り組んでいるといえますが、この経済人コー円卓会議でも市民がCSRに注目してもらえるようなインフラを様々な形で整備しています。これは当然私どもだけではできませんので、様々な組織・団体とのコラボレーションによって行っているわけですが、これは世の中全体がこういうことを意識していることの現われといえるでしょう。
 例えば消費者が物を買うにしても、この会社とその会社の商品で何が違うのか。多少値段が高くても、CSRによく取り組んでいるということであれば多少余分なお金を出してでも買うというように、消費者の選択の中にCSRが判断材料として出てくるようになれば、CSRは市民社会の中で根付いたと言えるでしょう。そして、そこまで進めば社会全体がより動いていくと思います。

 

 

 

Q6: CRTに入ってから何か生活に変化はありましたか。

 

-自分のしたい時に自分の仕事ができるという意味で、非常にフレキシブルに対応できるということでしょうか。好きな運動もできるし様々なことができるので、人生をエンジョイしながらやっているというところはありますね。その一方で企業にいれば雑用は全部誰かに任せられたのですが、この組織ですと全部自分でやらなければいけないので、そういう意味ではこまめに動くようになったとは思います。

 

 

Q7:CSRについての講演をされる機会も多いと思うのですが、何か心がけていることはありますか?

 

-話をする時に気をつけることとしては、どんどん一方的にしゃべるよりも、聞いている人達がどれくらい話の内容を理解してその場で考えてもらえるか。そういうことをすごく意識しながら進めているというところはありますね。ですからパワーポイントのスライドを使ってプレゼンテーションをしている時でもスピードはそんなに早くはないです。どちらかと言うと少しゆっくりめで、相手とキャッチボールが出来るようにしていきたいなと思っています。

 

 

Q8:最後に、 石田さんのモットーを教えて下さい。

 

-特にCRTに入ってから、まあ以前銀行にいたときもそうだったんですけれども、「休むな、ひるむな、へこたれるな」というモットーがあります。これは賛否両論あるかと思うのですが、私は単純にこのフレーズが好きで常に心がけています。
  「休むな、ひるむな、へこたれるな」というと、「休むな」というところでCSR的に言うとどうなのかとは思うんですが、自分としては今の活動を非常に楽しんでやっているので、そんなに休まなくてもどんどん楽しみながらやっているということで、ストレスにはなっていないのです。そういう意味では非常にエンジョイしながらやっています。ですから、引き続きこの「休むな、ひるむな、へこたれるな」を私のモットーとしてやっていきたいと思っています。

 

 

(インタビュー実施:2007年8月、再構成:2010年1月)