2011年に国連人権理事会において全会一致で承認された「国連『ビジネスと人権』に関する指導原則」には、企業は「人権を尊重」し、「犠牲者が、実効的な救済の手段にアクセスできるようにする必要がある」と明記されています。このように、企業に対し、サプライヤーや地域コミュニティも含むバリューチェーン全体での自社の負の影響の防止・軽減とともに、起きてしまった負の影響の被害者の救済を可能にする「苦情処理メカニズム」(被害者の申し立てを受け付け、適切な是正策を実施するための仕組み)の構築・運用を求める声が高まっています。
既に、本社や関係子会社の社員に対する「苦情処理メカニズム」(ヘルプライン等)については多くの企業で導入がみられますが、国境を越えて広がるサプライチェーンに対する「苦情処理メカニズム」を構築する際には、言語や文化が異なること、二次・三次サプライヤーや地域住民といった自社の管理外のステークホルダーも対象となり得ること、さらに(コンプライアンス上の問題だけでなく)人権に関わる幅広い問題が対象となり得るという点に留意する必要があります。
それでは、サプライチェーンにおいて、真に実効性があり、意味のある苦情処理メカニズムを構築・運用するためには何が必要となるのでしょうか。
まずは、潜在的な被害者が、苦情処理メカニズムを、正直・公正・平等に則って判断されるものであると信頼することが重要です。そのために、彼(ら)に対して、苦情処理メカニズムへのアクセスの方法や想定される対処の方法および期間について事前に周知することが重要です。信頼感の醸成なしに、実効的な苦情処理メカニズムは存在しえません。その上で、自社の事業あるいは事業上の関係から権利を侵害される事態が発生した際には、被害者の声を素早く適切に拾い、彼(ら)の状況改善に向けて、誠実に対話することが求められます。ここにおいても、被害者の立場に寄り添った形で苦情の内容を理解するように努め、対応方法を検討し、被害者が納得する形での救済策を提供することが必要です。
CRT日本委員会では、実効性のある「苦情処理メカニズム」の構築にあたっては信頼感の醸成が重要かつ不可欠であると考え、①Capacity Buildingを重視した、②共有の「苦情処理メカニズム」の実現に向け取り組んでいます。①Capacity Building を重視することで、潜在的被害者が自身の有する「権利」を理解し、主体性をもって自身の権利の実現に向けた方法を考えることで、適時適切かつ被害者の状況に合わせたベストな解決策を導くことができ、また、②一企業が単独で「苦情処理メカニズム」を設置するのではなく、複数の企業で「苦情処理メカニズム」を共有/利用することで、公正で透明性が高いものになると考えるからです。また、このようなプロセスの実施にあたっては被害者が属する地域の言語・文化・法制度を理解する組織との協働が欠かせませんが、メカニズムの共有によって効果的な協働が促進されると考えます。
CRT日本委員会では、上記のような実効性のある「苦情処理メカニズム」の構築に向けて、2015年より、各方面と協力しながら、まずはタイを起点とした取り組みを進めています。
・「CRT日本委員会の考える苦情処理メカニズム」については、こちらをご覧ください。
「苦情処理メカニズム」に関する取り組み状況につきましては、本ページにて随時ご報告いたします。
・2017年1月から4月開催の「苦情処理メカニズムに関する勉強会の実施」については、こちらをご覧ください。
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