格付機関から捉えた投資行動と「ビジネスと人権」との関係 ~EIRISの取り組みとその方向性~ 開催報告
2014年7月15日に開催しましたEIRISとCRT日本委員会、ビジネス・人権資料センターの共催セミナー「格付機関から捉えた投資行動と「ビジネスと人権」との関係~EIRISの取り組みとその方向性~」は、40社・団体から48名の皆さまにご参加いただき、盛会に終了しました。ありがとうございました。
当日は、人権パフォーマンス評価のベンチマークを投資判断に統合する構想について、EIRISのCEOピーター・ウェブスター氏の講演に耳を傾けました。また、社会的責任投資フォーラム(SIF-Japan) の荒井勝会長、ビジネス・人権資料センター(同ベンチマークに関するプロジェクトのパートナー組織)日本代表の高橋宗瑠氏からは、このイニシャティヴの重要性についてのコメントがなされました。
開会に際し、SIF-Japanの荒井会長より、この様な重要なスコープを持つグローバル・イニシャティヴに参画する事の必要性、人権の尊重と救済のための企業戦略・実践を測定するというニーズを高めてゆく必要性が紹介されました。続いて、ビジネス・人権資料センターの高橋日本代表からは、人権とビジネスの問題を進展させるイニシャティヴの重要性、更に、ビジネス・人権資料センターにとって、こうした取り組みの情報を得ることの重要が強調されました。
EIRISの紹介に続き、EIRISのCEO、Peter Webster 氏は、ビジネスと人権に関する国連指導原則が「保護、尊重、救済」の枠組みにおいて、明確に国家と企業の責任を分けていることの意義を強調するとともに、この枠組みを基本とした企業の人権パフォーマンスのベンチマーキングが、競争優位や透明性といった利点をもたらし得るのだと述べました。(ベンチマーク(評価)を実施するためのプロセス、その他今回の提案に関する情報については、このレポートの最後に添付されているプレゼンテーション資料をご参照下さい)また、ステークホルダー・エンゲージメントは何よりも重要なポイントの1つであること、なぜなら、個々のステークホルダーグループ(投資家、企業、市民団体など)には、このベンチマーク(人権パフォーマンス評価)の機能・役割に対して、また、その結果が企業の人権パフォーマンスを進展させる影響力について、夫々の立場からの期待や考えが存在するからであるのだと強調しました。
このグローバル人権パフォーマンス評価(ベンチマーク)の紹介と提案に続き、CRT日本委員会事務局長の石田より、ビジネスと人権に関する投資家向けガイド(仮訳)「Investing the Rights Way」についての説明を行いました。この文書は、ビジネスと人権に関するアジェンダの重要性を、主要な投資家コミュニティーが深く理解し、対話できるよう支援するものです。(下記のリンクより同文書のダウンロードが可能です(英文))
参加者からの質問に応え、ウェブスター氏は、これはベンチマークそのものを意図した質問リストを作ろうとしているのではなく、例えば、方針とコミットメント、リスクの同定と対応、方針の実行及び報告のためのマネジメントシステム、問題発生時の救済策、方針やシステムのスコープと外部協力、といった内容を含む、より一般的な質問項目を設定するものであり、むしろ企業の「人権課題のためのCDP」と考えるべきである、と解説しました。
最後に、参加者に対して今回の提案の適切性を検証するための3つの質問が投げかけられました。
- 人権は今後更に重要な判断材料となってゆく、という考えは正しいだろうか。
- この人権パフォーマンス基準(ベンチマーク)は、社内の意識や関心を経替える推進力となりうるのか。
- 投資家は、各企業が人権課題を配慮してゆくための、重要な影響力となりえるのか。
これらの質問に対し、殆どの参加者が当然の事とし、積極的な反応を示しました。
経済人コー円卓会議日本委員会はEIRISと共に、これからも人権パフォーマンスを強化するための新たな協業の形とツールの開発に取り組んでまいります。
当日配布資料
- EIRISによるプレゼンテーション 英文
- Investing the Rights Way –A Guide for Investors on Business and Human Rights-(英文)