2017年1月から4月にかけて「苦情処理メカニズムの勉強会」を実施します。
苦情処理メカニズムに関する勉強会の実施
本勉強会のご案内状はこちら。
国連「ビジネスと人権に関する指導原則」は三本柱(国家による人権保護、企業による人権尊重、是正)により構成されています。指導原則の策定(2011年)以来、国際社会の関心は「国家による人権保護」および「企業による人権尊重」に集まり、「是正」はその関心や取り組みから取り残されてきました。
本来、人権尊重の事業活動を展開するならば、実際に人権侵害を受けた被害者を救済することは何よりも基本かつ重要なことであるはずです。この「是正」への取り組みを促進すべく、OHCHR(国連人権高等弁務官事務所)は2014年にAccountability and Remedy Projectを開始、調査対象国において「是正」を実現する仕組み(主に国家基盤型の苦情処理メカニズム)について調査を開始、2016年5月に報告書を発表しました(脚注1)。また、ICAR(企業の説明責任に関する国際円卓会議)は2013年より「是正」についてのプロジェクトを開始(脚注2)、2016年には(国家基盤型のみならず)非国家基盤型の苦情処理メカニズムの状況についても理解を進めるべく、4つのイニシアティブ団体とともにダイアログを実施しています(脚注3)。また、同2016年、グローバル6組織(脚注4)による協働プロジェクトCHRB(Corporate Human Rights Benchmarking)は、指導原則に則って企業の取り組みを評価すべく、グローバル100社を対象にパイロット調査を開始、ここには非国家基盤型の(事業レベルの)苦情処理メカニズムに関する質問が含まれています。これは、企業における苦情処理メカニズムの設置状況について(その結果が一般公開される)初の大規模調査といえます(脚注5)。さらに、同2016年、GRIは新しく公表したGRI Standardsの中で苦情処理メカニズムの扱いを強化(細分化)しています。2016年は苦情処理メカニズムに関して大きな動きが見られた年と言えるでしょう。
経済人コー円卓会議日本委員会は、2015年より、日本企業にとって有効な苦情処理メカニズムのあり方を探るべく、いくつかの日本企業の協力を得て、その本社および海外支社において意見交換を行うとともに、苦情処理メカニズムに関する情報の整理を進めてきました。今回、これらに基づいて、「苦情処理メカニズム」に関する勉強会を開催いたします。本勉強会では、苦情処理メカニズムに関する情報を整理し(1回および2回目)、自社で有する苦情処理メカニズムの設置および運営の状況を理解し(3回目)、その情報に基づいて「苦情処理メカニズム・ガイドライン(案)」(4回目および5回目)を作成することを目的とします。
なお、2016年9月、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会は、現在策定中の「持続可能性に配慮した調達コード」の中に、調達コードの不遵守に関する苦情等を処理する仕組みとして「苦情処理システム」(苦情処理メカニズム)を含めることを明らかにしています。
注)本勉強会は、企業のCSR・法務・リスクマネジメントご担当者の他にも、政府・国内外開発金融機関・国内外ADR機関等における苦情処理メカニズムあるいは紛争解決メカニズムに関係するご担当者からも広くお申し込みを受け付けますが、主な議論の内容は「事業レベルの苦情処理メカニズム」に限定し、「苦情処理メカニズム・ガイドライン(案)」は企業にとって有用なものとなるべく作成しますので、予めご了承ください。なお、各回で扱うテーマおよび議論の内容については、以下をご確認ください。
脚注)ページの最後に記載されています。
開催概要
※予告なく変更する可能性があります、予めご了承ください。
開催時間は全回15時半~17時半(2時間)です。
回数・日時 | 内容 | 1回目 2017年 1月18日(水) 15時半~17時半 |
●「苦情処理メカニズム」と「責任ある調達」 ・今、なぜ、国内外のサプライチェーンに開かれた苦情処理メカニズムが重要か ●「苦情処理メカニズム」とは ●各種ISO文書において「苦情処理メカニズム」はどのように記述されている?あるいはされていない? ●「苦情処理メカニズム」の実効性要件とは? ●改めて、「苦情処理メカニズム」とは |
2回目 2017年 2月15日(水) |
●グローバル企業における「苦情処理メカニズム」の設置状況は? ・まず、何から、どう始めよう? ●「苦情処理メカニズム」を運営する国内外の組織、イニシアティブ、業界団体、民間企業 ●自社の人権リスク対応能力の強化につながる「苦情処理メカニズム」を |
3回目 2017年 3月15日(水) |
●自社の現状を確認する(※事前に、確認用のチェックリストを配布します) ・どの部署が、どのステークホルダーからの意見を受け付けている? ・意見を受け付ける範囲は?国内従業員のみ?海外子会社の従業員も含む?国内外のサプライチェーンは? ・第三者機関への委託の有無は? ・これまでに、政府や開発金融機関が有する苦情処理(紛争解決)メカニズムに対して、自社に対する意見が寄せられたことがある?その時の対処の方法は? ・海外で受け付けた意見は本社に報告されている?本社で一元管理されている? ・ガイドラインや対処のフローや結果は社内で共有されている?公開されている? |
4回目 2017年 4月12日(水) |
●「苦情処理メカニズム・ガイドライン(案)」の内容共有 | 5回目 2017年 4月26日(水) |
●「苦情処理メカニズム・ガイドライン(案)」の文言確認 |
●会場
東京駅周辺(追って、参加者へご連絡いたします)
●対象
企業のCSR・法務・リスクマネジメントご担当者。また、政府・国内外開発金融機関・国内外ADR機関等における苦情処理メカニズムあるいは紛争解決メカニズムのご担当者。ただし、議論の内容は事業レベルでの苦情処理メカニズムが中心となりますので、ご注意ください。なお、場合により、企業からのお申し込みを優先させていただきます。
●言語
日本語
※「苦情処理メカニズム・ガイドライン(案)」は、7月末を目途に英訳し、広く国内外へ発表いたします。
●費用
30万円(税別)/組織(会場費・資料印刷費・翻訳およびプルーフリーディング費を含む)
※一組織より3名様までご参加いただけます(お申し込み時にご登録ください)。資料準備の都合上、お申込みいただいた後に、日別に参加人数をお伺いいたします。最大10組織(最大30名)までといたします。
●お申込み
下記リンクにお進みください。申込締切:2016年12月23日(金)
https://business.form-mailer.jp/fms/2efe469062613
●主催
経済人コー円卓会議日本委員会
●問合せ先
経済人コー円卓会議日本委員会
担当:岡田美穂
メール:miho_okada@crt-japan.jp
電話番号:03-5728-6365
脚注)
(1)国連人権委員会における決議26/22に基づくプロジェクトとして発足。Human Rights Council. (10 May 2016). Improving accountability and access to remedy for victims of business-related human rights abuse – Report of the United Nations High Commissioner for Human Rights. https://business-humanrights.org/sites/default/files/documents/A_HRC_32_19_AEV.pdf ここには、国家基盤型苦情処理メカニズムに関する提言が含まれている。
(2)ICAR. (2015). Righting Remedy: Dialogue between Practitioners Using Judicial & Non-Judicial Mechanisms to Support Victims of Corporate Human Rights Abuses. http://icar.ngo/wp-content/uploads/2016/04/Righting-Remedy-reports-for-website.pdf
(3)ICAR. (2016). Remedy in the Context of Multi-Stakeholder Initiatives Summary Report. http://icar.ngo/wp-content/uploads/2016/08/MSI-Summary-Report-Final.pdf
(4)6団体の名称は右の通り。AVIVA、Business and Human Rights Resource Centre、Calvert Investments、IHRB、VBDO、Vigeo Eiris。なお、詳細は右を参照方。CHRB. (2016). Corporate Human Rights Benchmark Pilot Methdology 2016. https://business-humanrights.org/sites/default/files/CHRB_report_06_singles.pdf
(5)企業による回答内容は、BHRRCのウェブサイト上に公開されており、確認することができます(既にアンケートの実施期間は終了しております)。https://business-humanrights.org/en/companies-disclosure-to-the-2016-corporate-human-rights-benchmark
その他にもVigeo Eiris等の評価機関が実施するアンケートにおいて苦情処理メカニズムに関する質問項目が含まれていますが、その結果は一般公開されないため、ここにおいて、本調査を「(その結果が一般公開される)初の大規模調査」と説明しています。