CRT日本委員会では、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」(以下、国連指導原則)の企業における実践に焦点を置き、グローバルなイニシアティブ団体とのパートナシップのもと、包括的な取り組み支援プログラム(サステナブル・ナビゲーション)を構築してきました。当会のアプローチの特徴は、「企業における効果的・効率的な実践を可能にする」ということにあります。人権リスクアセスメントやインパクトアセスメントといった顕著な課題の特定支援はもちろんのこと、ステークホルダーエンゲージメントに向けた協働プラットフォームの提供や特定された課題への対処を可能とするツールの提供も行い、国連指導原則で求められる人権デューディリジェンスの企業における実践を支援しています。
サステナブル・ナビゲーションの取り組みステップ
STEP A: 企業とステークホルダーとの対話
ステークホルダー(特に、人権侵害を受けている/受ける可能性のある人々、あるいはその代弁者)との対話を通じて、彼らの懸念や期待、また、何が問題となっているかを理解する。
CRT日本委員会のステークホルダー・エンゲージメント・プログラム(本表STEP A・B)では企業、NPO/NGO、有識者等による対話を通じて、人権問題が発生する文脈、事業活動と人権との関連性、重要な人権課題、及び人権に配慮した事業活動の重要性ついて理解を深める。
STEP B: 業界毎に重要な課題の特定
人権課題の起こりやすさには業界特性が影響する部分も大きいため、同業他社やステークホルダーとの対話を通じて、自社が属する業界において顕著な人権課題を理解する。
CRT日本委員会のステークホルダー・エンゲージメント・プログラム(本表STEP A・B)では、業界別のグループに分かれ、バリューチェーン全体において当該業界に特に関連性が高く、顕著となり得る人権課題について整理する。(一部NGO/NPO、有識者も参加)
STEP C: 人権課題と自社事業との関連性の整理
STEP Bで整理した業界毎に重要な人権課題、およびNGOのレポート等の各種資料をもとに自社事業とそれらの人権課題との関連性を整理する。
STEP D:国や原材料に付随する人権リスクの評価
事業に付随する人権リスクを評価する(人権リスクアセスメント)。
CRT日本委員会の人権リスクアセスメントでは、JPR&C社による客観データに基づく人権リスクアセスメントを実施後、関連部門からのヒアリング結果も踏まえ、当該企業において優先的に取り組むべきテーマを抽出する。
STEP E:人権への負の影響の評価
特定の課題や国を対象として、「誰の、どのような人権が、負の影響を受けているのか/いないのか」を現地でのインタビューや現場訪問を通じて確認する。
CRT日本委員会の人権インパクトアセスメントでは、関係者へのインタビューや現場視察を通じて、「規模」「範囲」「是正の困難さ」の3つの観点から「誰の、どのような人権が、負の影響を受けているのか/いないのか」を評価し、人権課題を特定する。
STEP F:既存の取り組みの整理
上記プロセスを通じて特定された顕著な課題について、現状の取り組み状況を棚卸し、取り組みにあたっての課題を整理する(何ができていて、何ができていないか)。整理作業後には、既存の取り組みの有効性やどのような取り組みが望まれるかについて人権分野の有識者(イニシアティブ団体、NGO等)と意見交換を行うことが望ましい(STEP G)
STEP G:イニシアティブ団体、NGO/NPO、ステークホルダーとの対話
有識者(イニシアティブ団体、NGO等)とSTEP Fで特定された課題への対応方法について意見交換を行う。また、優先的に取り組むべき課題の選定が適切か、抜け漏れがないかを確認する。
CRT日本委員会では海外有識者とのダイアログの場を提供している。
STEP H:取り組み方針の策定
特定された顕著な人権課題に適切に対処するための活動計画を策定する。人権課題への対処においては、他組織との協働や各種プラットフォームの活用についても考慮するとよい。また、経営の意思決定への「ビジネスと人権」の統合に向けて、事業戦略やオペレーションへの組み込みの検討も望まれる。
CRT日本委員会では、各社の状況を踏まえ、経営への統合も見据えた効果的な取り組み方針策定の支援を行っている。
STEP I:取り組みの実施
活動計画に基づき取り組みを実施する。取り組みは社内関連部門のみならず、サプライヤーや取引先、また、関係機関との関わりが求められるものもある。
CRT日本委員会では、クライアント企業の状況に応じてサプライチェーンマネジメントツールの提供や個別プログラムの実施支援等を行っている。
STEP J:取り組みの有効性の評価
活動計画に基づき実施した人権課題対処の取り組みについて、その有効性を評価する。現時点で何ができていて、何ができていないか、また、取り組みを通じて得た学びについて整理する。整理作業後には、有効性評価の妥当性やより効果的な取り組みのあり方について人権分野の有識者(イニシアティブ団体、NGO等)と意見交換を行うことが望ましい(STEP K)。
STEP K:イニシアティブ団体や有識者による活動のレビュー
有識者(イニシアティブ団体、NGO等)とSTEP Jで行った有効性評価やより効果的な取り組みのあり方について意見交換を行う。
CRT日本委員会では海外有識者とのダイアログの場を提供している。
STEP L:報告書作成
一連の取り組みについて、進捗状況や取り組みの結果について対外的に報告する。
CRT日本委員会では「国連指導原則報告フレームワーク(UN Guiding Principles Reporting Framework)」等の国際的な報告フレームワークに沿った報告書の作成を支援している。
STEP M:報告のレビュー
報告書の発行後に内容や開示状況についてレビューを行う。
CRT日本委員会では「国連指導原則報告フレームワーク(UN Guiding Principles Reporting Framework)」等の国際的な報告フレームワークに沿った報告書のレビューを行っている。